「異端の作曲家 エリック・サティとその時代展」に行ってきた

8月某日、Bunkamuraで「異端の作曲家 エリック・サティとその時代展」を見てきたので、その感想など。

www.bunkamura.co.jp

展示内容

 エリック・サティ (1866-1925) は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家である。彼のジムノペディは、誰でも聞き覚えのある曲だと思う。


サティ/ジムノペディ 第1番 - YouTube

 サティはモンマルトルで活動し、個人での音楽活動だけでなく、芸術家との交流やコラボレーションを精力的に行った。当時モンマルトルは、ピカソゴッホほか様々な芸術家が活躍する芸術の街であり、サティはバレエ公演「パラード」「本日休演」ほか多数の舞台作品や、絵画と短い楽曲と詩とを組み合わせた「スポーツと気晴らし」などの作品群に参加し楽曲を提供した。


Picasso and Dance. Parade, 1917 - YouTube


Erik Satie Sports et Divertissements サティ「スポーツと気晴らし」絵付き ...

 このほか、具体的な展示の様子については以下ページを参照。展示の写真なども多くわかりやすい*1。本postはだいぶ雑なまとめになってしまっていて、ほとんど展示の雰囲気が伝わらないと思うので……。

www.salonette.net

感想

 今回の展示を見る前は、サティについて「ジムノペディを作った作曲家」というイメージしか持っていなかったが、今回の展示で、サティが音楽とそれ以外の芸術とのコラボレーションにも多数参加していたことがわかった。とくに「スポーツと気晴らし」は、他に類を見ない珍しい形態で音楽と詩、絵画を融合させたものではないかと思う。

 「スポーツと気晴らし」を簡単に紹介すると、狩り、海水浴、カーニバル、競馬、花火などといった21のテーマについて、絵画と楽譜、詩がセットになったもの。ただし楽譜には小節の区切りがなく、また詩は「歌詞」ではない。詩は楽譜の中に書き込まれているが、音楽に乗せて歌うのではなく、読むか朗読するもののようだ。この「スポーツと気晴らし」は、その演奏を実際に聴かずとも、楽譜を眺めているだけでそのモチーフが分かるものが多く、見ているだけで楽しめるものだった。たとえば「花火」や「ゴルフ」には、花火が打ち上がる、あるいはボールが飛んで行く場面を想起させる、長いスラーに囲まれた旋律があったり、「ブランコ」や「競馬」にも、ブランコが往復する、あるいは馬が走っている場面であることがわかるリフがあったりして、楽譜を眺めているだけで楽しめた。この「スポーツと気晴らし」の目新しいスタイルが大変気に入ったため、今回は下記参考文献に挙げた図録集まで買ってしまった。このような新しい芸術あるいは娯楽のスタイルを切り開いていく力というのは、時代を問わず価値があるものだと思う。

 またサティは「スポーツと気晴らし」に限らず、とくに舞台作品について多数の (今風に言えば) コラボ作品に参加しているが、これは当時のモンマルトルあるいはモンパルナスが、現代のスタートアップにとってのシリコンバレーのようなものだった、と自分は理解した。

 それから、とくに「パラード」に出てくる馬 (上記動画の冒頭に出てくるやつ) や、その他にも複数の絵画が、モンティ・パイソンのアニメーションの雰囲気に似ている (というより、モンティ・パイソンがこの時代の芸術をモチーフにしている) ような気がした。気のせいかもしれないが。パイソンズは大好きだ。

 最後に、このpostを書く上で、自分にとって芸術の話をうまく文章にまとめるのが大変むずかしい、ということがわかった。芸術についてそれなりの量の文章を書く機会というのは、実は初めてかもしれない。

参考文献

*1:展示スペースでは写真撮影が禁止されていたため、自分は写真を用意できなかった。リンク先のページはジャーナリストの方によるものなので、主催者側から記事執筆の依頼 + 写真撮影の許可があったのだろう。